薬剤師の年収は低すぎる?業界内での収入格差と高収入を目指すための方法
「薬剤師の年収は低すぎるのでは」と疑問を持つ人は多いです。薬剤師の年収は経験年数や所有する資格で大きく異なります。
この記事では、薬剤師の年収が低すぎると感じる理由や、年収を左右する要因について解説します。薬剤師の年収を上げるためには、業種や勤務形態の選択と、経験年数ごとに会得すべきスキルや資格取得が重要です。この記事を読めば、高年収を得るためにやるべきことが理解できます。
薬剤師の平均年収と他職種との比較
薬剤師の平均年収は約500万円で、一般的な他職種と比較して高い水準です。薬剤師は専門性と需要により安定した収入を得ていると言えます。
薬剤師の平均年収
薬剤師の平均年収は、およそ500万円から700万円程度です。
経験年数による薬剤師の平均年収は以下のとおりです。
経験年数 | 平均年収 |
新卒 | 約300~400万円 |
3年目 | 約500万円 |
5年目 | 約600万円 |
10年目 | 約700万円 |
20年目 | 約800万円~ |
薬剤師の年収は業種や地域、個々の能力により大きく変動します。薬剤師は経験年数が多いほど年収が上がり、大手ドラッグストアや病院勤務の薬剤師の年収は平均より高い傾向があります。
薬剤師と他職種の年収比較
薬剤師の年収は一般的な他職種と比較すると高い水準ですが、医師や歯科医師と比較すると、やや低い傾向です。
薬剤師と他職種の年収を以下にまとめました。
職種 | 平均年収 |
医師 | 約1,500万円 |
歯科医師 | 約1,100万円 |
弁護士 | 約1,000万円 |
公認会計士 | 約900万円 |
薬剤師 | 約600万円 |
教員 | 約600万円 |
ITエンジニア | 約550万円 |
看護師 | 約500万円 |
会社員全体 | 約430万円 |
薬剤師の年収が低すぎると感じる理由
薬剤師の年収が低すぎると感じる以下の理由を詳しく解説します。
- 高い学費の割には収入が低い
- 地域や業種により年収の差が大きい
- 他職種と比較すると年収が低く感じる
高い学費の割には収入が低い
薬剤師の年収が低すぎると感じるのは、6年間に及ぶ薬学部の教育期間と高い学費負担に見合う年収を得られていない場合です。国立大学の薬学部の学費は6年間で約780万円、私立大学で約1,000万円以上かかります。薬剤師としてのキャリア開始後は、経験年数に応じた資格取得やスキルの会得も必要です。
薬剤師の年収は他職種と比較して良い水準ですが、高額な学費負担と比較して十分な収入を得られているとは言えません。多くの薬学生は、高い学費を賄うために奨学金や学生ローンを組むのが一般的で、卒業後の返済が負担となります。
地域や業種により年収の差が大きい
薬剤師の年収は、地域や業種により異なります。同じ薬剤師でも年収に大きな差が出るため、年収が低めの地域や業種で働く薬剤師は年収が低すぎると感じやすいです。
地域による年収は、都市部では薬剤師の数が多く、年収が上がりにくい傾向にあります。一方、地方では薬剤師が足りず、年収を高めに設定した求人をするため、年収が高くなる傾向にあります。
業種による年収の差も顕著です。ドラッグストアや小売薬剤師、調剤薬局の薬剤師は売上や深夜勤務手当に応じて年収が変動しやすくなります。
業種による報酬体系の違いを以下にまとめました。
- 病院薬剤師
- 基本給や賞与、その他の手当などの加給はほぼ固定です。業績による賞与変動は少なめで安定しているのが特徴です。
- ドラッグストアや小売薬剤師
- 基本給はほぼ固定で、会社の業績に応じて賞与やインセンティブを支給される場合があります。深夜営業をしている店舗では深夜勤務手当の加給があります。
- 製薬会社や臨床開発の薬剤師
- 基本給は調剤薬局やドラッグストアの薬剤師より高めに設定されている場合が多いです。賞与は会社や個人の業績に応じて支給されます。業績の影響を受けやすいため、賞与変動が大きめです。
- 国立病院機構や省庁の薬事関連部門の公務員薬剤師
- 基本給は民間病院薬剤師と比べて抑えめで、賞与や退職金制度の充実度が高いです。国家公務員薬剤師の報酬体系は国家公務員の給与体系に基づいて定められています。
- 調剤薬局の薬剤師
- 基本給はほぼ固定で、会社の業績に応じて賞与やインセンティブを支給される場合があります。報酬体系はドラッグストア薬剤師とほぼ同等です。
他職種と比較すると年収が低く感じる
医師や歯科医師と比較して年収が低すぎると感じるのは、年収の差が理由の1つです。医学部と薬学部は同じ6年制で、国家資格の取得も共通しています。しかし、薬剤師の年収は、医師や歯科医師などの医療職と比較して低い傾向があるためです。
他の一般職と比較すると、IT業界や金融業界では高度な専門知識が必要で、知識に見合った高額な報酬が設定されます。ビジネス界のコンサルタントやエンジニアも高収入を得やすく、薬剤師との年収差を感じさせる一因です。
弁護士や会計士などの専門職と比較しても、薬剤師の年収は低い傾向が見られます。弁護士や会計士の専門性や特性、市場価値、取得スキルの違いを考慮しても、薬剤師の年収が相対的に低く感じやすいです。
薬剤師の年収を左右する要因
薬剤師の年収を左右する要因は以下のとおりです。
- 業種
- 勤務形態
- 経験年数
- 専門性
業種
薬剤師の年収は、勤務する業種により大きな違いがあります。業種により求められる役割や専門性が異なるため、年収に差が生じます。
業種による薬剤師の年収を以下にまとめました。
業種 | 平均年収 | 業務の特徴 | 役割と専門性 |
病院 | 約480万円 | 医師や看護師と連携したチーム医療 | 特定の専門領域に特化 研究活動 行政機関への出向 マネジメント経験 |
調剤薬局 | 約510万円 | 地域住民の健康を守る身近な存在 | 経営 マネジメントスキル 地域貢献度 在宅医療への関与 |
製薬会社 | 約710万円 | 新薬開発や治験、営業など多様な職種 | 研究開発職 グローバル展開に関わる職種 特許取得 |
ドラッグストア | 約530万円 | 調剤と一般医薬品や日用品の販売 | マネジメントスキル 地域密着型の顧客開拓 調剤業務の効率化 |
学術や研究機関 | 約610万円 | 大学や公的研究機関 | 研究テーマの独創性 国際的な評価 研究成果の社会実装 |
» 薬剤師の仕事内容と働き方
» ドラッグストア薬剤師の仕事内容
» 病院薬剤師について解説
勤務形態
薬剤師の年収は勤務形態により大きく変わります。正社員とパートタイムでは年収に数百万円の差が出ますが、ライフステージの変化に合わせた勤務形態の変更も、現在は一般的になっています。
勤務形態による年収の上がり方と、業種による年収例を以下にまとめました。
- 正社員
- 正社員の場合、キャリア開始後は経験年数や管理薬剤師、薬局長などの役職就任により上昇します。基本給以外の手当や福利厚生が充実しており、賞与も支給されます。年収は病院薬剤師で約400~600万円、調剤薬局で500~650万、ドラッグストアで500~700万円程度です。
- パートタイム
- パートタイムの場合、時給と勤務時間で年収が決まります。高時給で長時間勤務すると年収も上がります。賞与はなく手当も少なめですが、柔軟性のあるシフト制が一般的で、都合に合わせた働き方が可能です。
- 契約社員
- 契約社員の場合、時給制または日給制で雇用され、契約内容により年収が決まります。契約期間が決まっているため、長期的な収入の安定さに欠けますが、柔軟性のある勤務が可能です。賞与や手当の支給はほぼなく、昇給のチャンスも少ないので、年収を上げるのが難しい勤務形態です。
- 派遣社員
- 派遣社員の場合、パートタイムと同様に時給と勤務時間で年収が決まります。派遣社員は高時給で雇用される場合が多く、経験年数や資格により3,000~5,000円の時給も珍しくありません。派遣場所により期間が決まっており、長期派遣されるほど年収が上がります。正社員より高い年収の派遣社員も多いです。
薬剤師の年収は勤務形態により大きく左右されます。年収を上げるには、ライフステージやキャリアプランに合わせた勤務形態の選択が重要です。
経験年数
薬剤師の年収は、経験年数により大きく異なります。新卒で薬剤師としてキャリア開始後の初任給は、平均で約30万円です。年収は経験や資格取得、スキルの会得で上昇します。
経験年数と会得するスキルに伴う平均年収を以下にまとめました。
経験年数 | 平均年収 | 会得するスキル |
1年目 | 約300~400万円 | 調剤業務の基本 服薬指導の基礎 医薬品情報収集能力 |
3年目 | 約500万円 | 処方箋解析 服薬支援計画の作成 チーム医療への参画 |
5年目 | 約600万円 | 管理業務 医薬品情報教育 研究開発への携わり |
10年目 | 約700万円 | 薬剤管理指導力 マネジメント リーダーシップ 経営企画 |
15年目以上 | 約750万円~ | 高度な専門性 上級管理職 コンサルタント 研究者 |
専門性
専門性は薬剤師の年収に大きく影響する重要な要素です。特定分野の専門知識やスキルを高めると、より専門的なサービスを提供できます。疾患や治療領域に関する深い知識がある薬剤師は高い評価を受けるので、高年収が可能です。
臨床試験や研究活動への参加経験を持つ薬剤師は、新しい薬剤の開発や承認プロセスに対する知識を深められます。薬学界だけでなく、患者へのカウンセリングや薬学教育にも役立ちます。
薬剤耐性や薬剤相互作用に関する詳細な知識を持つ薬剤師は、患者へ安全な薬物治療を提供する上で欠かせない存在です。病院薬剤師として医薬品管理能力を高めることは、薬の安全性と効果を確保するために必要です。専門的なスキルを持つ薬剤師は高年収の可能性が高まります。
薬剤師が年収を上げるための方法
薬剤師の年収を上げる方法には、資格取得やキャリアアップを目指す転職、管理職や専門職への昇進などがあります。
資格を取得する
薬剤師の年収を上げる有効な手段の1つが資格取得です。認定薬剤師や専門薬剤師などの上位資格を取得すると、専門性を高められ高年収につながります。
薬剤師が取得できる主な資格は以下のとおりです。
資格種別 | 資格概要 | 資格の種類 |
専門薬剤師 | 特定の医療分野における専門的な知識や技能を有する薬剤師として認定 | 医薬品情報専門薬剤師 外来がん治療専門薬剤師 感染制御専門薬剤師 地域薬学ケア専門薬剤師 薬物療法専門薬剤師 HIV感染症専門薬剤師 がん指導薬剤師 妊婦・授乳婦専門薬剤師 栄養サポートチーム(NST)専門療法士 など |
認定薬剤師 | 特定の業務領域における高度な知識や技能を有する薬剤師として認定 | HIV感染症薬物療法認定薬剤師 漢方薬・生薬認定薬剤師 救急認定薬剤師 外来がん治療認定薬剤師 がん薬物療法認定薬剤師 研修認定薬剤師 小児薬物療法認定薬剤師 糖尿病薬物療法認定薬剤師 災害医療認定薬剤師 プライマリ・ケア認定薬剤師 など |
転職する
薬剤師として年収を上げるには、転職が効果的な手段になります。高収入が期待できる職場や、自身のスキルを活かす環境を見つけることが大切です。
年収を上げるために必要なポイントを以下にまとめました。
- 専門の転職エージェントを活用する
- 薬剤師専門の転職エージェントは、薬剤師業界の求人情報に精通しており、希望に合った求人の紹介が可能です。面接対策や履歴書の添削など、転職活動の幅広いサポートを受けられます。
- 市場価値を理解する
- 自身の経験やスキルが、求人市場でどの程度の価値があるか理解することが重要です。転職エージェントや薬剤師向けの求人情報サイトなどを活用し、希望する職種の年収相場を調べましょう。
- 給与交渉の重要性を認識する
- 希望する年収を達成するために給与交渉は欠かせません。事前に市場価値を理解した上で、具体的な金額を提示します。経験やスキルをまとめた資料の準備も重要です。
管理職・専門職を目指す
管理職への昇進や専門性の高い分野で活躍すると、在職しながら高年収が期待できます。
管理職や専門職を目指すためのポイントを以下にまとめました。
- 目指したい年収とキャリアプランを明確にする
- 必要なスキルと経験を身に付ける
- 上位の資格取得を目指す
管理職や専門職を目指すと、キャリアアップや高年収が実現できます。チャンスがあれば積極的に責任ある立場を狙っていく姿勢が大切です。
» 薬剤師の年収、地域別の年収、年収を上げる方法を解説!
まとめ
薬剤師の年収が低すぎると感じる理由は以下のとおりです。
- 6年間の高い学費負担と年収が見合わない
- 地域や業種により年収の差が大きい
- 他の医療職や職種と比較して年収の差が大きい
薬剤師の年収は業種や勤務形態、経験年数、専門性により大きく異なります。年収が低すぎると感じる場合は、適切な業種の選択や資格取得をすると、高年収が可能です。状況により転職を念頭に置き、個々のキャリアプランに沿った計画を立てましょう。